組織信仰・思考からの脱却―エホバ神は特定の地上の組織を任命して用いておられるのか

組織信仰・思考からの脱却―エホバ神は特定の地上の組織を任命して用いておられるのか

最近、当サイトへたくさんの有益なコメントをしてくれている現役のエホバの証人「アリウス君」より、記事としても取り上げるべき重要なコメントを受けました。それは、「組織」というキーワードに関するものです。まずは、アリウス君からのコメントの該当部分をご紹介します。

現役のエホバの証人、アリウス君のコメント

大切なのは見張りの者として叫び続けていることではないでしょうか。その点ではあらゆる人々が認めているように、JW程徹底的に述べ伝えている人々はおらず、ヨエル書のいなごのようにあらゆるところに入り込んでいきます。更には貴殿もお認めになられているように”彼らの善良さ”です。その数世界で800万を超えております。あらゆる人種やイデオロギーを超えてこの数を集めるのは、しかもその全員が宣教を行なっているのは脅威的な集団です。そんな彼らは毎週の説教で頭を垂れ反省し自らの罪と戦っております。勇気をもって見ず知らずの家々をノックし震える手で聖書を開き証言します。無学無教養な信者全員がです!故に彼らを改心させたいならば、これと同様の業を行なっている、投獄されてまで徴兵拒否をする、そして命懸けで輸血拒否をする(あえてここでは聖書的判断とは言いませんが)キリスト教徒の集団を提示する必要があるでしょう。何故なら宣教はキリストに追随する者にとってミッションであり、毎回豊かな霊的食物を供給し、その圧倒的な数によって神の是認を受けているという納得させる証拠を示さなけらばならないからです。

引用元はこちら

このコメントは、エホバの証人に疑問を持たせ、考えるきっかけを与えるためにはどうすればいいか、という視点でアリウスさんが当記事へアドバイスをしてくれている内容なのですが、なぜ重要だと思ったかというと、文章の中に、ものみの塔による教えのエッセンスが見事に反映されており、そのエッセンスが、多くのエホバの証人が組織から脱却できない原因となっているからです。そのエッセンスとは何かということ、「組織思考」「組織信仰」という信仰と思考の枠組みであり、ものみの塔による次のような教えに基づいています。

「エホバは旧約時代と同様、今日においても一つの地上の組織を任命し用いておられる。それゆえに、地上のエホバの民は、天のエホバの組織と一致して前進していくために、エホバの地上の組織として存在する『ものみの塔』及びその『統治体』を認め、組織に従い、歩調を合わせていく必要がある」

上記の文章は組織の教えを筆者が要約したものですが、ものみの塔による文章も併せてご紹介させていただきます。

あなたは指示に従いますか (3 回)
ですから,神がみ言葉 聖書とご自分の地上の組織を通して与えておられる指示にわたしたちが従うのは大切なことです。… わたしたちは,クリスチャン会衆の頭であられるイエス・キリストが神のこの地上の組織の任命された経路である「忠実で思慮深い奴隷」を通してお与えになる指示に従わなければなりません。(マタイ 24:45-47。エフェソス 5:23)
塔90 10/1 30~31ページ – ものみの塔 1990

さて、上記の組織の教えを信じるとどうなるかというと、「神が用いている一つの組織があるはずだ」という前提を思考の土台として持つことになり、組織に疑問を持ち始めた後も、ものみの塔以外の「他の組織」を見つけようとします。そして、伝道や輸血拒否や殉教や非三位一体等の幾つかの条件を満たす「組織」が他に無い場合、やはり「この組織なのだ」という考えに戻ってしまったり、ある人は「もう神なんか信じられない」となります。

私自身も、しばらくはそのような思考パターンに陥り、他の組織を探したりもしました。しかし、その後改めて聖書を学び、聖書理解を再構築していく中ではっきりとわかったことは、「そもそもエホバは、特定の(単一の)組織を用いていないし、単一の組織を用いようともしておられない」ということでした。その理由を、これから説明していきたいと思います。

新世界訳(1985年)における組織の出現頻度

エホバの証人の口癖の一つは、「組織」です。「こんな組織は他にない」「組織へ導く」「組織に忠実にありましょう」こんな言葉が、普段の交わりの中で頻繁に行き交います。しかし、聖書時代の神の民は、「組織」という言葉をそんなに用いたでしょうか?

新世界訳(1985年)における組織の出現頻度を確認すると、なんと聖書全体を調べても「組織」というキーワードが出てくるのは、わずか四ケ所だけです。。。

歴代第一 23:6
ダビデは彼らを,レビの子たちであるゲルションとコハトとメラリの家系に従って組分けして組織した。

出エジプト記 38:8
水盤とその台を銅で作った。銅は,会見の天幕の入り口で奉仕するために組織されていた女性たちの鏡を使った。

歴代第二 8:16
ソロモンの工事は全て,エホバの家の土台を据えた日から完成の時まで,よく組織されていた。こうしてエホバの家は出来上がった。

歴代第二 26:11
ウジヤは,戦いに備えた軍隊を持つようになった。軍隊は分隊に組織されて戦いに出掛けた。彼らは,秘書官エイエルと役人マアセヤによって数えられて登録され,王に仕える高官の1人ハナニヤの指揮下に置かれた。

特に新約聖書には「組織」が一回も登場しません。つまり、聖書時代の神の民の中には、現代のエホバの証人が抱いているような「組織思考・組織信仰」は存在しなかったのです。

※最も、旧約聖書の時代に、神がイスラエルという単一民族を用いていたことは明らかであり、国家であった以上、ある程度の組織化は当然必要でしたが、現代のJWのように、「組織・組織」と連呼してはいなかったと思われます。

エルサレム会議は一世紀の統治体?

使徒15章には、当時勃発した割礼問題を解決するために、エルサレムに使徒たちや長老たちが集まって会議をしたことが記録されています。この時は、エルサレムのリーダーたちだけでなく、アンテオケからパウロ等の使徒も派遣され、一堂に会しました。統治体は、このエルサレム会議を根拠に、この集まりを現代の統治体の原型であるとしています

1世紀には「エルサレムにいる使徒や年長者たち」がクリスチャン会衆全体のために重要な決定をしていましたが,統治体はその型に倣っています。(使徒 15:2)1世紀の忠実な人たちと同様,統治体の成員も組織の指導者ではありません。エホバ神がイエス・キリストを会衆の頭として任命されたことを認め,導きを求めて聖書を調べます。―コリント第一 11:3。エフェソス 5:23。
エホバの証人の統治体とは何ですか

しかし、使徒の働き全体や、新約聖書全体を見ても、複数の地域の使徒やリーダーたちが、重要な問題について話し合うために集まったのは、この時だけです。それは、古い契約の時代から新しい契約への移行期において、福音の真理の土台が据えられるための重要な論争だったからです。

一方、それ以外の場合では、彼らは継続的にエルサレム等の主要地域で集まって会議をしている、という様子はありませんでした。聖書にもそれは記録されていません。それは、一世紀のクリスチャンが、今日のものみの塔組織のような中央集権的な組織構造を持ってはいなかったことを明らかにしています。各地域の教会の運営は、エルサレムの使徒たちが一元管理していたのではなく、各地域の長老たちの裁量にゆだねられていた、ということです。

パウロが教会の開拓をした後に、いつもそこで育った人々を長老として任命し、次の伝道へ旅立っていったのも、そのためです。(もっともパウロは、長老を任命する前に、教理的な土台をしっかり教えていました)

単一の組織ではなく、同じイエス、同じ福音、同じ霊

このように見ていくと、紀元一世紀の教会は、単一の組織として機能していたわけではないことがわかります。この状態を、組織思考的な枠組みで見ると、「単一の組織がないと、信者をまとめれないじゃないか」と思うかもしれませんが、それは神のやり方ではないのです。

使徒の働きを丁寧に読んでいくと、使徒たちが何に導かれて宣教していったのかがよくわかります。それは復活のイエスであり、そのイエスが遣わしている「聖霊の働き」です。ですから、「使徒の働き」は、言い換えれば「復活のイエスと聖霊の働き」なのです。神が必要としているのは、単一の組織構造をもった組織ではなく、同じ聖霊に満たされ、その聖霊によって物理的にではなく、霊的に結び合わされている神の家族なのです。

つまり、同じ聖霊を宿し、同じイエスと同じ福音を信じているのであれば、組織やグループが違ってもいいのであり、一つの家族なのです。

組織の存在を全く否定しているわけではありません。キリスト教にも、たくさんの組織があります。色々な宣教団体、色々な教団、教派があります。しかし、組織や教団は違えども、同じイエスと同じ福音を信じ、同じ聖霊に導かれているなら、私たちは一つの家族、一つの兄弟であり、キリスト・イエスにあって一つなのです。

大事なのは、同じ組織にあって一つであることではなく、キリスト・イエスの内にあって(in Christ)一つであることなのです。

「ユダヤ人もギリシャ人もなく,奴隷も自由人もなく,男性も女性もありません。あなた方は皆キリスト・イエスと結ばれて一人の[人]となっているからです。」ガラテア3章28節、新世界訳

「体は一つ,霊は一つです。それは,あなた方が自分たちの召されたその一つの希望のうちに召されたのと同じです。5 主は一つ,信仰は一つ,バプテスマは一つです。」エペソ4章4~5節、新世界訳

「実際,誰かが来て,私たちが伝えたのとは別のイエスを伝えたり,皆さんが持つようになったのとは別の精神を持たせようとしたり,皆さんが受け入れたのとは別の良い知らせを告げたりすると,皆さんはすぐに許容してしまいます。」コリント第二 11:4、新世界訳

イエスによって一つとされたキリストの体の働きをご紹介

超教派の働きの一つ、通路チャペル

具体的な事例を一つご紹介したいと思います。「キリスト教は伝道していない」とよく批判するエホバの証人ですが(あながち、間違ってはいない所もありますが、、)、そんなエホバの証人があまりリーチできていない人たちの中に、「路上生活者」がいると思います。実は、路上生活者への伝道という領域で見ると、少なくとも東京においては、キリスト教サイドに完全に軍配が上がると言ってよいでしょう。

実際、東京近郊の炊き出しの半分前後は、キリスト教系の団体によって行われており、炊き出しの活動を通してイエスへ導かれる人も少なくありません(組織へではなく、イエスへ導かれます)

代々木公園で毎週土曜日の朝、通路チャペルという路上生活者向けの働きが十年以上前から行われていますが、そこには実に様々な教会から、クリスチャンの奉仕者が集まります。バプテスト派、聖霊派、無教会派、聖公会等、またいつも色々な宣教団体が宣教師たちを派遣してくれています。

そこにあるのは、単一の組織によって管理されている伝道ではなく、イエスにあって一つとされた兄弟姉妹たちが、各々聖霊に導かれ、一つの働きへ集められた姿です。そこには一致があり、愛があり、主の御心があるのです。

→ 通路チャペルの紹介

世界宣教、中国の地下教会のリバイバル

おそらく、単一の組織として、最も多くの国や地域に徹底して伝道しているのは、確かにエホバの証人かもしれません。しかし、イエスにあって一つとされた世界中の兄弟姉妹たちは、教団や教派を乗り越えて、それぞれの地域で一致しながら、それぞれの方法で福音を広げているのです。

このようにイエスにあって一つとされた兄弟姉妹たちの働きを合わせるなら、その働きの大きさや救いに導かれた人の数は、エホバの証人の伝道活動を遥かに上回ります。

たとえば、1970年代から、中国では聖霊の超自然的な働きによるリバイバルの炎が燃え上がり、その炎は瞬く間に中国全土を覆っていきました。それから2~30年後には、地下教会の信者の数は、数千万人に膨れ上がりました。元地下教会の著名なリーダーの一人であったブラザー・ユンの書いた「天国の人」を読むと、その光景がよくわかりますが、このたった数十年の中国内の聖霊の働きのみでも、全世界のエホバの証人800万という数を、遥かに上回ってしまいます。

しかも、伝道の熱心さや、迫害に対する確固たる信仰においても、地下教会の信者のそれは、本当に尊敬に値すべきものです。以下の動画は、地下教会の信仰や、置かれている現状を理解する上で役に立つ内容ですので是非ご覧下さい。

「アッセンブリーズ・オブ・ゴッド」成長率でものみの塔を大きく上回る組織

最後に、あえて単一の組織を挙げるとすれば、アッセンブリーズ・オブ・ゴッドを挙げたいと思います。1900年代初頭に起きたアズサストリートリバイバルの流れから始まった著名なペンテコステ系の教団ですが、2018年のウィキペディアによると、「世界規模での信徒は約69,200,000人。世界190カ国に広がり、教会の数では、世界規模では375,310ほど点在する」とあり、およそ過去100年間で、エホバの証人の10倍近くの6900万人もの信者数に増加しています。

もしも人数の増加を「神の祝福のしるし」と見るならば、エホバの証人は今すぐに大挙して脱退し、アッセンブリーに行くことを真剣に考えた方が良いでしょう。

合わせてお勧めする記事

本記事の内容は、カルトやマインドコントロールというテーマと深い関連性のあるテーマです。以下の記事も、合わせて読んでいただくことによって、この問題への理解を深めることができると思います。

11. エホバの証人のカルト性|ものみの塔の実態に迫る

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2件のフィードバック

  1. アリウス君 より:

    笑!いや〜…そう来ましたか!確かにこのコンテンツは、今まで何の疑いも無く「組織はあって当たり前」という思考に疑問を抱いていないJWに対して一石を投じるものとなるのは間違い無いでしょうね。
    ここから「信仰に組織は必要か?」という議論になってくると思います。面白くなってきました。

    • Webmaster-GJW より:

      記事を書くきっかけを与えてくれたことを感謝します! 組織の有無もそうですが、組織がある場合、そのありかたも重要になってきますね。JWの組織の場合、組織のあり方に、色々な問題があると考えています。

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