児童性的虐待問題(コンティー裁判)を明らかにする|エホバの証人への伝道サンプル

昨今、世界中のメディアで取り沙汰された「児童性的虐待」問題から、ものみの塔の隠蔽体質や寄付金の用途の不透明性を明らかにし、現役信者の目を覚ますことが、本伝道サンプルの狙いです。

解説

数年前に、アメリカのキャンディス・コンティーという元エホバの証人の女性が、加害者の男性信者を性的虐待の罪で訴えた裁判がありましたが、2012年の6月、カルフォルニア州の最高裁は、280万ドル(約22億円)*[1]の賠償命令を出しました。裁判では、事件を隠蔽しようとした教団側の責任も問われたため、ものみの塔協会には、賠償金の40パーセント(約8億8000万円)の支払いが命じられ、二年間の資産凍結も言い渡されました。

そして、賠償金は寄付で集められた資金から捻出されましたが、寄付を捧げる信者にはその事は一切明かされていません。そのため、証人たちは、寄付金が「世界的な聖書教育活動」のみに用いられると、組織から信じ込まされ続けています。

そこで、都合の悪い真実を隠す、という情報統制の問題と、寄付金の運用における不透明性を指摘することが、ここでの狙いです。

サンプルの中で相手の証人に見せるニュース記事は、ニューヨーク・タイムズ掲載のものを用います*[2]。記事のタイトルは「Jehovah’s Witnesses Told to Pay in Abuse Case」です。この記事の中では、資産凍結についての記載はありませんが、以下に引用する箇所において、教団本部側に賠償金の40%となる860万ドル(8億相当)の支払いが命じられることが示されています。

原文:“Mr. Kendrick, 58, now lives in Oakley, Calif., according to the state’s sex offender registry. He was ordered to pay 60 percent of the judgment, but Mr. Simons said there would be no attempt to collect any money from Mr. Kendrick, in part because he would not be able to pay. The Watchtower Bible and Tract Society of New York -the organization overseeing the Jehovah’s Witnesses - would be responsible for 40 percent, Mr. Simons said.”

日本語訳:「州の性犯罪者登録によると、58歳のケンドリック氏[事件の加害者]は現在、カリフォルニア州オークリーに住んでいます。彼は判決の60%を支払うよう命じられましたが、サイモン氏[被害者の弁護士]は、『ケンドリック氏からお金を集めることはできない。ものみの塔聖書冊子協会 ― エホバの証人を監督する組織 ― には、[判決の]40%の責任がある。』と述べました。」([]内は、翻訳者による付加)

・ニュースサイト『The New York Times』:www.nytimes.com

キャンディス・コンティーがものみの塔を訴えた本裁判に関する詳細は、過去にABCニュースで取り上げられた映像が、以下のYouTube動画でご覧いただけます。

なお、本テーマは全ての信者が気付くべき重要な問題ですが、この話題を取り上げると、途中から険悪な雰囲気になることもありますので、会話の最後では、以下に紹介する伝道サンプルのように、相手への善意に基づいて会話をしたことを伝えると良いでしょう。

伝道サンプル

・・適当な話をしてから・・

【CH】ところで、先日エホバの証人の話題を取り上げている海外のニュースを見たのですが、ロシアでエホバの証人が禁令になったことは、信者の皆さんはご存知でしょうか?*[3]

【JW】はい、知っていますよ。私たちのウェブサイトでも、正式に公表されています。

【CH】禁令で自由に活動できなくなるのは、とても大変なことですよね。

【JW】はい、そうなんです。なのでわたしたちは、皆でロシア政府に手紙を書いたりして、禁令が解除されるよう努力してきたんです。

【CH】そうでしたか、皆さんは仲間を大事にされているんですね。ところで、もう一つ気になったニュースを目にしたのですが、よろしければ、そのニュース記事を今お見せしますので、ご意見をお聞かせいただけますか?ニューヨーク・タイムズの記事です。・・(スマホで用意する)・・

【JW】はい、いいですよ。

【CH】・・(記事を見せながら)・・こちらです。英語のサイトですが、数年前に、アメリカで起きた児童性的虐待に関する有名な裁判で、ものみの塔が敗訴したことについて書かれています。これについてはご存知でしたか?

【JW】いや、それについては知りませんが。。

【CH】本当に知らないんですか?大変有名な裁判ですよ。カリフォルニア州の最高裁の判決では、加害者だけでなく、教団側にも8億円相当の賠償命令と二年間の資産凍結が命じられました。どうやら、事件を隠蔽しようとした教団側の責任が問われたことも関係しているようです。

【JW】まあ、事実かどうか、調べてみないとわかりませんが、、*[4]

【CH】ニューヨーク・タイムズはとても有名なニュースメディアですし、裁判所の判決ですから間違い無いですよ。タブレットか、スマホはお持ちですよね?よかったら、こちらの記事の画面を撮っておいてもらえますか?そうすれば、後で記事のタイトルを確認して調べることができると思いますので。

【JW】いえ、、、それは結構です*[5]

【CH】そうですか、無理にとは言いませんが、教団のリーダーは信者の皆さんから、都合の悪い情報を隠しているみたいですね。

【JW】いえ、そんな事は無いと思います。必要な情報は、ウェブサイトで知らされますので*[6]

【CH】では、皆さんが寄付したお金が、このような裁判の賠償金に使われてきたことはご存知でしたか?

【JW】・・・いえ、それは知りませんでしたが。

【CH】それはかなり深刻な問題ですよ。まともな団体であれば、会計報告はきちんとしますし、信者の皆さんには、寄付の用途を知る権利があるわけですから。多分、アメリカの本部に渡ったお金の用途について、ちゃんとした会計報告は知らされていないんじゃないですか?

【JW】えぇ、、後で確認してみたいと思います*[7]

【CH】この事をお伝えしているのは、同じ聖書を信じる者として、皆さんのことを気にかけているからなんです。今お話をさせていただいた上で、ものみの塔は都合の悪い情報を信者から隠す、かなり透明性の低い団体だと思いました。皆さんの伝道に対する熱意は素晴らしいと思いますが、肝心の組織に問題があれば、せっかくの伝道も無駄になってしまいますよね。この機会に、是非自分の目で外部の情報を確かめてはいかがでしょうか?神様も、真実な方ですから、皆さんが本当のことを知るのを願っているはずです*[8]

【JW】えぇ、ありがとうございます。後で確認をしてみたいと思います。

補足事項

児童性的虐待に関するその他の問題について

オーストラリアでは、1950年以降、合計1000件以上の児童性的虐待が、エホバの証人の組織内で生じたことが発覚しています。調査をしたのは、「王立調査委員会」というオーストラリアの公的な調査機関で、ニュース映像がYoutube等でたくさん投稿されています。余裕があれば、オーストラリアの件と合わせて説明すると、より大きな効果を期待できるでしょう。

カルトについて

ものみの塔協会は、自分たちがカルトではないと主張していますが*[9]、カルトの正確な定義を信者に教えていません。本書の1章でも触れましたが、カルトとは、指導者たちの目的を推進させるために、信者を過度にコントロールしようとする人権侵害の組織のことです。多くの場合、指導者の絶対的権威が主張され、その権威に対する服従心・依存心を培わせるために、情報統制、自律的思考・批判的考えの停止、などの手法が用いられます。このような定義を口頭で説明できると、問題の重要性を、相手により深く理解させることができます。

情報統制の問題点を理解させるための他の論法

都合の悪い真実を隠す、という手法が、組織の信頼性を崩す大きな問題であることは、次のような側面からも指摘できます。

【CH】こういうのを情報統制、といいますが、カルト団体がマインドコントロールのためによく用いる手法なんです。偏った情報を聞かされ続ければ、人は必ず誤った考えを持つことになるので、大変危険です。例えば皆さんは、聖書の歴史を信用していますか?

【JW】はい、それは信じています。

【CH】私も同じように信じていますが、聖書が信頼に値する重要な理由は、筆者たちが自分たちの成功だけでなく、失敗も正直に記録しているからではないでしょうか?*[10] それで、ものみの塔が、都合の悪い情報を隠す組織なら、それは聖書的な態度ではありませんし、信頼に値する団体とは認められません。

脚注

[1] 2012年当時のレートで、22億円相当でした。

[2] 本裁判に関する色々なソースを調べましたが、信頼性のある著名なニュースサイトで、賠償金の支払いが教団側にも求められることに触れているものとしては、上記で紹介しているニューヨーク・タイムズの記事がベターだと判断しました。

[3] ロシア問題を最初に話すのは、(1)先に相手を油断させる、(2)自然な会話の流れで本題を取り上げるための伏線、(3)知らされている情報とそうでない情報の違いがあることを認識させる、という狙いがあります。なお、ロシアでの禁令については、エホバの証人のサイトやその他のサイトでもたくさんの情報が出てきます。

[4] 多くの場合、相手のエホバの証人は一連の情報の真実性を問題視します。その理由は、「反対者の情報を信用すべきではない」と組織から教えられているからです。

[5] 組織に対するネガティブな情報を避けるようにと日頃から指導されているので、断られる場合もありますが、撮影してくれる可能性もあります。断られそうになっても、「ちゃんとしたニュースサイト」であることを強調すれば考え直してくれるかもしれません。他にも、後で記事のURLを送るから、連絡先を教えてほしい、と頼むこともできます。

[6] 多くの信者は、組織への信頼ゆえに「必要な情報は組織から与えられる」と信じているので、このような返答をしてくる可能性はかなり高いです。

[7] 地元の会衆単位ではきっちり会計報告がなされていますが、日本支部、世界本部における会計報告は皆無です。

[8] 組織の問題点を話すと、相手のエホバの証人は自分が責められているような感覚を覚えます。ですから、こちら側の動機が、あくまで証人たちへの愛に基づいたものであることを伝えると良いでしょう。

[9] エホバの証人の公式サイトの記事「エホバの証人はカルトですか」(JW.ORG)を参照。

[10] エホバの証人は聖書を信じているので、聖書を引き合いに出して説明すると、効果的です。

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