3. 組織構造|エホバの証人とはーものみの塔の実態に迫る
統治体を頂点とするピラミッド構造
「エホバの目に見える地上の組織」の構造
組織構造は、統治体を頂点とするピラミッド構造となっており、以下のような流れで、組織上の情報や指導の伝達が行われます。
- 統治体
- 世界各国の支部
- 旅行する監督
- 各会衆の長老団
- 各会衆
- 一般の信者(伝道者)
以下の図は、ものみの塔協会が「エホバの目に見える地上の組織」であることを読者に印象付ける目的で作成されていますが、ものみの塔の組織構造と、エホバの証人の組織信仰を理解する上で役立つでしょう*[1]。
統治体とは
「統治体」(Govering Body)とは、全世界のエホバの証人を監督・指導する少人数のグループであり、組織の中では、「忠実で思慮深い奴隷」という名称でも呼ばれています。2018年1月時点では8人のメンバーがおり、彼らは米国ニューヨーク州ウォーウィックにある世界本部に常駐し、そこから6つの委員会を通して、世界中のエホバの証人の活動を管理しています。
ものみの塔の教理では、統治体は信者を教え、指導するために、キリストから直接任命を受けた存在とされているため、そこから出る教えや指導は、事実上、神から出た絶対的なものであると見做されます*[2]。
9 自分で聖書を理解できる,と考える人がいるかもしれません。しかし,イエスは「忠実[な]奴隷」を任命し,霊的食物を分配するための唯一の経路として用いています。栄光を受けたイエス・キリストは1919年以来,その奴隷を用いて,追随者たちが神の書を理解し,その指示に従えるよう助けておられます。聖書の教えに従うなら,会衆の清さと平和と一致を促進できます。それで,こう自問するとよいでしょう。「わたしは,今日イエスが経路として用いている奴隷に忠節だろうか」―『ものみの塔研究用』2016年11月号 16頁、9節
統治体の存在の聖書的根拠としては、忠実な奴隷に関するたとえ話や(マタイ24:45~46)、エルサレム会議(使徒15章)などが挙げられます。
世界本部:ニューヨーク州ウォーウィック
ものみの塔の世界本部は、長い間、ニューヨーク州ブルックリンにありましたが、現在は米国ニューヨーク州ウォーウィックに移転されました。建設には、のべ一年半ほどかかったようですが、特に環境保護を重視した構造になっており、サステナブル・デザイン(環境的に持続可能な設計の分野)において最高評価を受けています*[3]。
日本支部:海老名ベテル
ものみの塔協会の日本支部は、神奈川県の海老名市にありますが、筆者も、現役時代は何度も足を運んでおり、思い出深い場所となっています。「ベテル」という名は、ヘブル語で「神の家」を表す名であり、エホバの証人は世界各国の拠点となる施設を「ベテル」と名付けています。
日本支部を含める各国支部は、「支部委員」と呼ばれる複数人のグループ(男性信者)によって統括されています。
海老名ベテルの注目すべきポイントは、毎時9万冊の雑誌を印刷できるマン・ローランド製リソマン輪転機です。この高速印刷機で大量に印刷された雑誌が、日本だけでなく、周辺の各国支部へも届けられています。
施設全体は、極めて清潔に保たれており、整理整頓が行き届いています。多くの支部施設は、一般向けにも公開されており、希望者であれば、施設の内部を見学することが可能です。
・見学時間:月曜日~金曜日 午前8:00~11:00,午後1:00~4:00
・所要時間: 約2時間
・その他:予約不要。入場無料で、寄付の催促もありません。勧誘されたり、密室へ連れ込まれたりすることはありませんのでご安心ください。
巡回監督―旅行する監督たち
エホバの証人の旅行する監督たちは、複数の国々を含む地帯を巡回する「地帯監督」(別称:本部代表)、各国内の分割された巡回区を旅行する「巡回監督」の二種類に分かれますが、一般の信者と多くの接点を持ち、特に注目に値するのが「巡回監督」です。
全ての旅行する監督たちは、組織内におけるエリート中のエリートであり、長年に渡る優れた奉仕の実績を持っています。
巡回監督は、20ほどの会衆を一週間ずつ、年に二回訪問します。訪問の目的は、各会衆の霊性をチェックし、励ましや助言を与えることであり、訪問中は、宣教や集会や交わりを通し、積極的に会衆の成員と交流を持ちます。
生活の費用は、組織から必要な額が支給されますが、その額は決して多くはありません。
長老―各会衆の長老団
エホバの証人は、分割された地域ごとに「会衆」を形成しており、各会衆には任命された複数の「長老団」がいます。長老の役割は、キリスト教における長老と同じであり、霊的な面で会衆を保護し、指導を与えます。長老になるためには、組織の中での長年の忠実な奉仕の実績があることが条件で、聖書的な「監督の資格」(第一テモテ3章1~6節)に適っているかどうかが吟味された上で、巡回監督から任命を受けます*[4]。
ただし、実際には十分な資格に適っていないにも関わらず、仲の良い長老の好意による推薦を受けることで任命されるようなケースもあり、その資質が問題視されるケースが多発している現状もあります。
なお、全ての長老の職務は、無給で行われます。
奉仕の僕(執事)
組織構造の図の中にはありませんでしたが、各会衆には、複数の任命された「奉仕の僕」(執事)がいます。奉仕の僕の役割は、長老の仕事を補佐することであり、集会のプログラム、案内係、音響機器の操作、文書管理、会衆の会計等、様々な仕事を率先します。
奉仕の僕になるためには、ある程度の忠実な奉仕の実績が必要であり、聖書的な「執事の資格」(第一テモテ3章8~9節)に適っているかどうかが吟味されます。
奉仕の僕の職務も、長老と同じく全て無給で行われます。
記事一覧:エホバの証人とは?
脚注
[1] 出典『ものみの塔(研究用)』2013年4月『うみ疲れてはなりません』
[2] 出版物による公式の定義としては、「統治体は間違えることもある」とされていますが、その一方で、統治体の見解に異を唱える人は排斥処分となる実態があります。この矛盾に多くの信者は気づいていません。―『ものみの塔(研究用)』2017年2月号、25頁。
[3] 「エホバの証人の新しい世界本部: サステナブル・デザインでGBIの最高評価を受ける」(JW.ORG)
[4] 以前は、長老や奉仕の僕の任命は統治体によってなされていましたが、現在は巡回監督によってなされるよう調整が加えられています。統治体が、昨今の児童虐待裁判において任命責任を問われたため、組織は多額の賠償金を支払ってきましたが、任命責任を巡回監督に移せば、本部と支部を守ることができます。このような背景があることから、調整の理由として最も可能性の高いのが「訴訟対策」であると、外部の人々の多くが考えています。
質問です。
(1)なぜ、統治体メンバーや支部委員は男性だけなのですか?たまたまですか?聖書の記述に基づいているのですか?
(2)統治体メンバーは8人と決まっているのですか?聖書の記述に基づいているのですか?どこかに「ラザフォードと7人の仲間たち」の記載がありましたが統治体メンバー8人の人数と関係がありますか?
ご返信が遅れて申し訳ございません。確認が漏れておりました。
(1)男性だけである理由は、聖書的なものです。女性は公に男性を教えてはならない、とある聖句がございます。
(2)統治体の人数は、ある程度上下すると思います。聖書は、複数の男性からなる長老団によって、教会が運営されるべきことを教えています。しかし、世界的に統一化・絶対化される統治体のような行き過ぎた権威は、聖書的には想定されていません。
「巡回監督がエリート中のエリート」という紹介はいささか実態と外れております。
友人が巡回監督になったり、親しくしている友人が元巡回だったりしていますが、”エリート”という表現からは遥か遠くにあります。笑 普通にアホだったりする人間くさいその辺の気さくなおっさんですよ。
まぁ、ヒエラルキーを説明するには修辞的な表現としていいかもしれませんが。
ご指摘ありがとうございます~ 私は数年内部にいたくらいですが、まさに組織の中のエリート街道まっしぐら、という印象でした。周りの兄弟姉妹たちが巡回監督に抱いている尊敬の念も交わりなどで感じてきましたが、そんな印象は持ってました。まあ、色々な監督がいるのと思うので、もっと全体で見れば、アリウス兄弟の言う通りなんでしょうね