目ざめたエホバの証人へのアドバイス⑦|家族や友人を救出する
組織の実態についてある程度理解が深まって来ると、周囲の家族や友人にも気づかせてあげたい、と考え出すものです。加えて、同じ家族に現役のエホバの証人(神権家族)がいる場合は、その家族を目覚めさせるかどうかは、その後の人生においてとても重要な課題となります。
しかし、色々な方々の話を聞く限り、この家族の救出で失敗をする人があまりにも多いことは大変残念な現実です。筆者の周りにも、救出作戦で失敗し、家族との交流が断たれてしまった、という方が何人かいらっしゃいます。ですから、できるだけ成功率を高め、万全な状態で望めるよう、続くアドバイスによく留意して下さい。
失敗しないための戦略を練る
第一関門を突破する
救出の段階は、「第一関門」と「第二関門」に分けて説明することができます。最もハードルが高いのが、第一関門であり、ものみの塔の教理や実態について、何らかの決定的な誤りに気づく段階を意味します。第二関門とは、ものみの塔が離れるべき組織であることを明白に理解し、次の人生へ踏み出す段階です。第一関門を突破できれば、組織に対する疑問や批判を会話で持ち出しても「背教者」扱いはされなくあるので、かなり見通しが良くなります。ですからまずは、いかに第一関門を突破できるかに、思いを集中する必要があります。
救出の必要な家族は何人いるか
同じ家族内に複数のエホバの証人がいる場合は、どのような順序で作戦を試みるのかを検討する必要があります。特に、家族の中に、組織に対する信仰心(組織信仰)が強く、救出が難しそうなメンバーがいる場合、先にその人に伝えて失敗すると、すぐに他の家族へも警告が回ってしまい、作戦が台無しになります。基本は、救出が簡単そうな家族から順に、段階的に事を運ぶのが良いでしょう。あるいは、状況次第では、同時多発的に作戦を実行する必要があることも考えておくべきです。
会って伝える
電話では、伝えることのできる情報に制限がありますし、万が一相手が警戒したらそのまま逃げられる可能性もあるので、必ず会って伝えるべきです。そして、少しの時間ではなく、ゆっくり話せるタイミングを狙う必要があります。ですから、同居している場合や、近い距離に家族が住んでいる場合は、救出作戦において大きなアドバンテージがあります。
救出したい家族が遠方に住んでいる場合は、帰省した時にゆっくり話せるタイミングを待つ必要があります。先走って、電話で余計な情報を出すと、帰る前から相手が警戒し、予防線を張られてしまうので注意が必要です。
救出時の不活発状態は要注意
家族の救出を実行しようとする時期に、もしもあなたがエホバの証人として不活発の状態であれば、注意が必要です。なぜかというと、多くの現役の信者は、不活発な人を「サタンの影響を受けている人」と見做しているため、その状態であなたがアプローチを試みても「聖霊の流れる場所に行っていないからだ」「組織に不忠実な生活を送っているから疑問が生じるんだ」という風に捉えられ、相手にされないケースもあるからです。
それで、救出相手がこのように考えるタイプであれば、必要に応じて、週に一回くらい集会に通い、「エホバの組織に留まっている」という体裁を整えておくのは、無難な選択肢の一つです。
ただし、自己の聖書的信仰が確立する前の段階であれば、集会への出席によって悪影響を被る場合があるので、無理しない程度にして下さい。そうでないと、表面的にはもっともらしく聞こえる教えによって言いくるめられ、理解が混乱し、ストレスを抱え込むこむ危険があります。また、精神的に不安定であったりする場合も、要注意です。
お勧めの流れとしては、体調不調などによって、自然な形で集会を一時的に休む期間を設け、その間にものみの塔の教理の矛盾について聖書からしっかりと考え抜くことです。そのようにして、偽りの教えに対する免疫力を強化するならば、無理なく集会への出席の再開を検討することができるでしょう。何にせよ、家族を救出するためには、まず自分が健康である必要があるのです。
家族との関係が良好でない場合
適切な方法を知らなかったために、過去の救出作戦で失敗し、家族関係が険悪になってしまっている、という例を多く聞きますが、そのような場合は、再度アプローチする前に、まずは家族関係の修復から始める必要があります。またこの原則は、その他の理由で家族関係が良好で無い場合も同様です。なぜなら、ある程度の信頼関係が無ければ、相手が耳を傾けてくれる可能性が低くなるからです。
回復の過程においては、一定期間、ものみの塔についての話題に触れないのも懸命な方法です。また、否定的な事を言い過ぎてしまったことがあれば、素直に謝る必要があるでしょう。いずれの場合も、それまでの状況を踏まえて、相手の気持ちに寄り添えるよう真摯に向き合うことが大切です。
なお、家族のマインド・コントロール度が強く、なかなか話を理解してもらえないことが積み重なると、どうしても否定的な感情を本人にぶつけたくなってしまうものです。このような感情への対処方法の一つとして、信頼できる友人等に、このもどかしさを聴いてもらって感情を吐き出す等、ストレスを溜め込まないように心がけることも大切です。
効果的なテーマを選ぶ
効果的なテーマ選びは極めて重要です。おそらく、家族への救出作戦で失敗する多くのエホバの証人は、このテーマ選びで失敗しているケースが多いことでしょう。かくいう私も、以前にそのテーマ選びで失敗し、一時的に親族から「サタン扱い」されたほどです。
効果的なテーマとは、組織の偽善や教理の間違いを「明白に証明できる」ものです。これらの条件に該当しないテーマは、失敗に終わる可能性が高いでしょう。
現時点での筆者のお勧めとしては、「十字架の問題」「偽予言」「144000人」「新世界訳聖書の改ざん」などが挙げられます。
話の切り出し方
理想的な流れとは
救出したい家族や友人の「背教者に対する警戒度」がどの程度かによりますが、万全を期すなら、話の切り出し方に注意する必要があります。組織に忠実なエホバの証人であればあるほど、「背教的な匂い」がした時点で、すぐに会話を中断する傾向があるからです。
そこで、理想的な流れとして、普通の会話の延長線上で、何気なく話を切り出すことが大切です。そして、相手が気づく時には、ものみの塔の間違いや偽善の証拠が既に提示されている、という状態にすることが必要です。以上の点を考慮した良い例と、悪い例を以下に示します。
状況設定:目覚めた息子が現役信者の母親を救出する
取り上げるテーマ:十字架の否定
良い例と悪い例
◆良い例
【息子】そういえばこの間、十字架に関する『論じる』の説明を読んでいて、興味深いことに気づいたんだ。
【母親】へえ、どんなこと?
【息子】『論じる』では、「杭」を表すギリシア語のスタウロスが「一本の杭」を意味することを示すために、インペリアル聖書辞典が引用されているんだけど、その辞典の文章を実際に確認してみたんだ。翻訳した文章があるから、ちょっと読んでみてもらえる?
【母親】よく調べたわね。えぇ、いいわよ。
◆悪い例
【息子】実は、ちょっと重要な話があるんだ。
【母親】えぇ、何かしら。
【息子】この間、十字架に関する『論じる』の説明を読んでいたんだけど、組織が重大な誤りを犯していることに気づいたんだ。
【母親】えぇ、重大な間違い?エホバの組織が、そんなことをするはずないじゃない?
【息子】いや、そうでもないんだよ。『論じる』では、「杭」を表すギリシア語のスタウロスが「一本の杭」を意味することを示すために、インペリアル聖書辞典が引用されているんだけど、その辞典の文章では、それとは正反対のことが書いてあるんだよ。翻訳した文章があるから、ちょっと読んでみてもらえる?
【母親】あなたもしかして、サタンにやられているんじゃない。お母さんは、そういうものは見ないわ!
紹介した「良い例」では、母親が警戒する前に、証拠となる文章を読ませることに成功しています。そのため、一度文章を読んだ後は、母親は組織の偽善を否定することができません。
しかし、「悪い例」の方は、初めから警戒心をもたせてしまっているので、読ませることに失敗しています。悪い例で切り出した時に、必ずそうなるとはもちろん限りませんが、万全を期すなら、良い例の切り出し方を徹底する必要があるのです。
長老に丸投げされた場合
ある程度、自分の頭で考えることのできる信者であれば、適切なアプローチを通して気づいてくれますが、それができない信者の場合は、「私にはわからないから、長老に話しなさい」という風に、長老に丸投げしてくることが想定されます。(実際に、筆者はそれを経験しています)
そうなったら、「急がば回れ」ということわざに従い、相手の提案通り、長老に話を持っていくと良いでしょう。この場合、長老に話をする目的は、反論不可能なテーマを長老に持ちかけて、「長老でも答えることができなかった」という回答を持って、再度家族にアプローチすることです。そうすれば、相手はいよいよ自分でも考えざるを得ない状況に直面することになるのです。
また、この一連の作戦を通して、長老を目覚めさせることもできるかもしれません。長老に相談する時は、次のような主旨を伝えれば、快く相談に乗ってくれるでしょう。また、以下の言葉に信憑性を持たせる意味でも、相談を聞いてくれている期間は、週に一回程度は、集会に参加し続けるのが無難です。
「自分は真理を求めており、今後もエホバにしたがっていきたい。ただし現時点では、組織の教えについて、いくつか疑問に感じていることがある。これらの疑問を解決した上で無いと、気持ちを新たにしてエホバに仕えることはできない。だから相談に乗って欲しい。」
それでも家族が目覚めない場合
残念ながら、最善のアプローチを駆使しても、家族や友人が真実に目覚めない場合があります。なぜなら、強いられてではなく、自ら真実に心を向けようとしない限り、組織の誤りを理解することはできないからです。そのような時に、家族との間に生じる心の壁によって経験する悲しみは、本当に辛いものでしょう。
しかし、救出作戦を実行した時期にそうでなくても、将来的に、神の導きによって、自ら組織の誤りや偽善に気付き、あなたの言葉に耳を傾ける時が来るかもしれません。ですから、諦めずに、再び相応しい時が来るのを待ち続ける必要があります。
「何事にも定められた時がある。天の下のすべての事には時がある。」(伝道の書3:1)
そして、相手が気付くかどうかに関わらず、大事な家族として、愛し続けることが大切です。そして、家族に無条件の愛を注ぎ続けるためには、あなた自身が、神と、神を愛する人々との交わりを持ち続けることも必要となってくるでしょう。なぜなら、家族を本当に愛するためには、まず自分の心に神の愛が満たされている必要があるからです。
そして、たとえあなたが組織の活動から離れていても、愛についての聖書の教えを実行し続けるならば、いつか救出相手の家族は、この問題について心を開く時が来るかもしれません。
4 愛は辛抱強く,また親切です。愛はねたまず,自慢せず,思い上がらず,5 みだりな振る舞いをせず,自分の利を求めず,刺激されてもいら立ちません。傷つけられてもそれを根に持たず,6 不義を歓ばないで,真実なことと共に歓びます。7 すべての事に耐え,すべての事を信じ,すべての事を希望し,すべての事を忍耐します。」(コリント第一13:3~7)
あなたの場合も、様々な導きがありながら、気付かなかったり、気付いてもはねのけて来たことがあったかもしれません。しかしキリストは、あなたが誤った知識に基づいて伝道していた証人時代から、あなたを愛し、諦めずに辛抱強く見守ってきてくれたのではないでしょうか?
「ところが神は,わたしたちがまだ罪人であった間にキリストがわたしたちのために死んでくださったことにおいて,ご自身の愛をわたしたちに示しておられるのです」(ローマ5:8)
あなたが、キリスト・イエスによって真に神と和解し、聖霊の支配に満たされ、キリストのような愛をもってご家族に接することができますように。
あなたが既に排斥されている場合
排斥によって、家族との会話ができなくなったとしても、根気強く接することで会話の道が開かれる、というケースもあります。たとえ教理によって縁が切れたとしても、家族同士は相手の幸せを願うものですから、あなたの思いが通じる可能性はゼロではありません。
また、周りの信者に密告されることを恐れて交流をしない、といった場合もありますので、地元から離れた場所で会うことを提案するのも、有効な方法の一つだと考えられます。
他には、同じ排斥されている立場であっても、復帰のために集会に通っている人と、そうでない人とでは、家族の対応には大きな違いが生じる可能性もあります。必要ならば、一時的にでも、そのような方法を選ぶことも検討する余地があるでしょう。ただし、既に述べたように、あなた自身の状況次第では、集会に行くことによって悪影響を受ける場合もあるので、その点は注意が必要です。
最後に、現役信者の家族を愛し続けること、あなた自身も神との愛の関係を保ち続けること、これらの原則は、あなたが既に断絶・もしくは排斥によって、家族と普通の交流ができなくなっている場合においても同じです。たとえ読んでくれないとしても、時々手紙を書いたり、プレゼントを送ったり、家族の救出のために執り成しの祈りを続けることができるでしょう。
あなたを通して、神の愛がご家族の方々の心に触れて下さるよう、心よりお祈りいたします。
私は、信者であった約30年、とても熱心だったと思います。両親、妹の一人更にその甥も私が伝えてエホバの証人になりました。ですが、私が一人娘を亡くして大変なとき、会衆からも妹からも酷い扱いを受けました。あのときよく断絶しなかったものだと周りからも言われ自分も今はそう思います。家族に対して、助け出したいと思うほどの愛情はありません。排斥時も精神バランスを保つのがとても大変でした。もっとも研究生の時司会者に精神病にさせられて(長老の婦人がそうおっしゃいました、今は私もそう思います)娘が亡くなるまで21年もの間向精神薬を飲んでいたのであんな思いをするのはもう嫌です。
辛いご経験をお話くださりありがとうございます。ご自身の中で、気持ちの整理や、傷ついた心の癒やしがなされないと、周りの愛を示そうとは、中々思えないですよね。このような場合の、私からのお勧めの書籍をご紹介させていただきます。(魂の傷からの癒やし)きっと、山口様の助けになると思います。