エホバの証人とキリスト教ー教理や戒律の比較表

エホバの証人とキリスト教ー教理の比較表
エホバの証人とキリスト教(プロテスタントとカトリック)の教理・戒律の比較表です。作成にあたっては、筆者の知識だけでなく、プロテスタントの牧師やカトリックの神父にもご協力いただき、内容の確認を進めました。目覚めたエホバの証人を含め、各宗派の違いを知りたい多くの方にとって、役に立つものとなれば幸いです。

 教理 エホバの証人 プロテスタント カトリック
聖書観 十全霊感説。※ただし聖書理解は、教団のリーダーの権威に完全に依存する。 十全霊感説、部分霊感説など、教派や教会によって様々な立場がある。 十全霊感説。※カトリック教会の伝統は、聖書を正しく理解するために重要なものとして位置づけられる。
指導者と
組織の権威
ものみの塔協会が唯一の神の組織であり、その指導者である統治体は唯一の経路である。 指導者や組織を神の唯一の経路として考える組織信仰は存在しない。※時々、一部のカルト化した教会で、そのような傾向が見られる場合がある。 カトリック教会は正統的な教会であり、その代表であるローマ法王はペテロの首位権を継承する使徒の頭、キリストの代理人であるとされる。また、法王がカトリック教会を代表して公式に発言する声明には、誤りは無いとされる*[1]
1914年 1914年に異邦人の時が終わり、キリストが王となって臨在を始め、終わりの日が始まった。 教理として存在しない 教理として存在しない
三位一体 三位一体を否定 三位一体を支持 三位一体を支持
霊魂不滅 霊魂不滅の否定 霊魂不滅を支持 霊魂不滅を支持
地獄の存在 地獄を否定 地獄の存在を支持。※地獄を否定する教会もしばしば存在する。 地獄の存在を支持。煉獄の存在も支持。
マリアについて マリアは崇拝の対象ではなく、原罪もあった。 マリアは崇拝の対象ではなく、原罪もあった。 マリアは崇拝の対象ではなく、すべての人の母として特別の存在。救い主イエスの母であることから、神の母とも呼ばれる。マリアは、イエスと人間との間を仲介し、霊的な助けを与えてくれる存在として信じられている。無原罪だったとされる。
天国 選ばれた144000人だけが行く 全ての信者が行く 全ての信者が行く
144000人 背教前の一世紀のクリスチャン*[2]とエホバの証人の油注がれた者たちを合わせた合計数が144000人になる。 144000人のユダヤ人だと理解する立場と、教会全体を表す象徴的な数字と理解する立場がある。(教派による) はっきりとした見解はない。
神の子ども 144000人以外は、ハルマゲドンと千年王国を生き延び、その後の最後の試みを通過した後で、神の子になる。 イエスを信じた時点で、誰でも神の子どもになる。 イエスを信じた時点で、誰でも神の子どもになる。
救いの条件 キリストを信じ、エホバの証人を神の霊に導かれる唯一の組織として認め、その組織に留まらなければ救われない*[3] キリストを救い主として信じた時に誰でも救われる*[4] キリストを救い主として信じた時に誰でも救われる。
イスラエル 置換神学:イスラエルは教会(霊的イスラエル)に置き換えられた。※ただし、霊的イスラエルとは144000人のメンバーのみを指す。 置換神学の立場と、非置換神学(イスラエルと教会を区別する)の立場に分かれる*[5]。全体としては、置換神学を採用する教派が多い。 置換神学に対する是非を想定した明確なイスラエル論は、カトリックの公式としては存在しない。
キリストの再臨と千年王国 千年期前再臨説:キリストは大患難の最後に目には見えない姿で来る。千年は文字通りの千年と理解する。 ほとんどの教派は、千年期前再臨説か、無千年王国説の立場を取る。千年期前再臨説の場合は、千年を字義通りに理解する場合が多く、無先年千年王国説では、千年を比喩的に理解する。 千年期前再臨説:千年が字義通りの千年かどうかについては、明確な定義づけはない。
携挙 患難中携挙説:携挙によって表されるような現象が起こることは信じるが、携挙という神学用語は用いない*[6] 千年期前再臨説の場合は携挙を信じ、無千年王国説の場合は携挙を信じない・あるいは強調しない場合が多い。携挙を信じる立場では、患難前、患難中、患難後、の説に分かれる。 携挙によって表されるような現象が起こることは信じるが、携挙という神学用語は用いず、その概念はあまり明確ではない。
聖霊の賜物(特に、異言や預言等、超自然的な賜物) 否定。聖霊の賜物は紀元一世紀に終わっている。 肯定する立場と、否定する立場があり、教派によって異なる。 カトリックの中でも、異なる立場がある。
同性愛 否定。同性愛を罪だと理解する。 教派によって否定派と肯定派に分かれる。福音派のほとんどの教会は否定。リベラルな教会では肯定派も存在する。 否定。公式的には、同性愛は罪だとされるが、踏み込んで理解する人々もいる。
良心的兵役拒否 絶対的平和主義。戦争の完全放棄 教派や個人によって様々な立場がある。 かつては自衛の戦争が肯定されていたが、現在の流れとしては、自衛の戦争に対しても否定的な見方になってきている。
輸血 輸血拒否 輸血可能 輸血可能
女性教師 不可。公に教える資格は男性信者のみに与えられる。 教派によって肯定派と否定に分かれるが、昨今は肯定派が多い傾向がある。 肯定。シスターが男性信者を教える場合もある。ただし、司祭の努めは男性のみに与えられる。
たばこ 不可。辞めなければバプテスマを受けることはできない。 教派によって容認派と否定派に分かれるが、全体的には否定的に見られる傾向がある。 容認。喫煙に関する明確な戒律は存在しない。
お酒 可能。ただし過度な飲酒は禁止されている。 教派によって肯定派と否定派に分かれる。ただし、どの教派においても、飲み過ぎは否定される。 可能。飲酒に関する明確な戒律は存在しない。
誕生日 祝わない 祝う 祝う
結婚観
(未信者との結婚について)
同じエホバの証人としてバプテスマを受けた信者のみと結婚が可能。 教派によって容認派と否定派に分かれる。原則としてはクリスチャン同士の結婚が奨励されるが、全体としては未信者との結婚も容認される立場が多い。 相手が未信者でも結婚が可能。ただし、同じクリスチャン同士の結婚が「秘蹟」と見做されるのに対し、相手が未信者の場合はそうとはならない。
指導者の独身制 否定。全ての監督・長老は妻帯可能。 否定。牧師・長老は妻帯可能。 肯定。カトリックの司祭は妻帯不可。

脚注

[1] ただし、エホバの証人のようなコントロールは存在しない。

[2] エホバの証人は、144000人に関する教理を正当化するために、教会は二世紀以降背教したと教えています。なぜなら、二世紀以降に油注がれた者の数が激減していないと、明らかに144000人という数字がオーバーしてしまうからです。しかしこれは協会によるプロパガンダであり、事実ではありません。二世紀以降は、あくまで背教との戦いが始まった時期であり、教会全体が背教したわけではないのです。

[3] プロテスタントのほとんどの諸教派において、人は行いによらず、イエスを信じた時点で誰でも義と認められ救われる、という義認の教えは一致しています。しかし、信じた後でも、救いの完成のために、神の恵みに留まることが条件となるかどうかについては、異なる立場が存在します。

[4] 聖書が教える救いの段階には、義認・聖化・栄化の三つの段階がありますが、エホバの証人の教えでは、「義認」に関するものがほとんど無く、救いは常に「ハルマゲドンを通過する」ことを念頭に語られます。この理由は、新しい契約に関する決定的な誤解、律法主義に基づく「行いによる救い」の概念が大きく関係していると思われます。

[5] プロテスタントでは、神の救済計画に関わる聖書の歴史をどう理解するか、ということにおいて、「契約神学」と「ディスペンセーション神学」という二つの神学体系が存在し、どちらの神学体系を採用するかは、イスラエル理解と密接に関連します。契約神学の立場ではイスラエル民族に対する約束は教会(霊的イスラエル)に置き換えられたとする「置換神学」を採用する一方、ディスペンセーション神学の場合は、イスラエルの役割と教会の役割を一貫して区別する「非置換神学」を採用します。

[6] ものみの塔は、大艱難時代の最中、ハルマゲドンが起きる前のある時点で、油注がれたクリスチャンたちが天に集められる、と教えています。―『神の王国は支配している』227~228頁.

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2件のフィードバック

  1. 簡潔な一覧表、ありがとうございます!
    プロテスタントに分類される教会も、実際はいろいろらしいので(例えばユニテリアンとかもあるし)、大変だったと思います。私は不勉強なので、用語がよくわからなかったりしますが(検索しながら読みました)、勉強になります。
    個人的には、教会統治の方法についても、トップをどう選ぶのか、下々の牧師・長老をどう選ぶ(任命する)のかや、運営費の徴収方法(什一など)など、比較説明をしてほしいところですが、「教理の比較」からは若干離れるところで、本頁の目的からは離れますかね。
    ありがとうございました!

    • Webmaster-GJW より:

      表が役に立って良かったです!
      プロテスタントの中にも、色々な解釈があるのだと理解できていると、教会に行く時や聖書勉強する時なんかにとても役に立つので、ご紹介させていただきました。
      引き続き宜しくお願い致します。

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